アリクイ工房

迷い犬を保護した話「小犬のまゆげ」を綴っています

呼び名は「まゆげ」  12月30日(5)

犬の食事のあとは、ヒトの夕食。
ぼちぼち呼び名がないと不便だということで、とりあえずの名前を決めようと家族で話し合う。

娘が思いついた「ココア」は却下。見た目と合ってない。
息子は、話を聞いて遊びに来た友だちと一緒になって、勝手に「モップ」と呼んでいた。
なるほど、お掃除モップに見た目そっくり。でもあんまりだよな。

あーでもないこーでもないと話してるうちに、息子が「ワンピースに『まつげ』ってキャラクターが出てくるね」と言った。
「まつげ」がいるなら、兄弟はまゆ毛か、それともうぶ毛か……

この犬の特徴は、目を覆わんばかりに伸びている頭の長毛。
飼い主はその毛を輪ゴムで留めている。
はみ出した毛が、まるでまゆげのように伸びている。
「まゆげ」、略して「まゆ」。しっくりするな。
こうして、我が家での彼の呼び名は「まゆげ」となった。

そんな話し合いをしている向こう側で、今宵の「まゆげ」はどうも落ち着きがない。
さっきから段ボールの囲いの中で足踏みをしている。
伸び気味の爪がタイルを叩き、カチカチと鳴っている。

ズザッ、ガリガリッと音がした。
様子を見に行くと、囲いに前脚をかけて立ち上がり、いまにも押し倒そうとする。
そのうちに、クーンクーンと鳴き始めた。

大人しい「まゆげ」が鳴くのは、今のところ食事かトイレのどちらかだ。
空腹だったら固形フードでも食べるだろうが、口を付けたようすはない。

いったん庭に出して、おしっこをさせる。
寒がって歩きたがらないので、そのまま家に入れる。

だが、「まゆげ」はまだ落ち着かない。
寝床には入らず、囲いを押しては何か訴えている。
そのうちに、ワンッワンッと吠え始めた。
ううむ、まだおしっこをしたりないのか。

息子と2人で懐中電灯を持って、改めて夜のお散歩へ。
やはりフルフル震えるが、歩き始めたら大丈夫そうだ。
昨晩より足どりはだいぶしっかりしている。
でも遠出をして歩けなくなってもいけない。
家の近くを行きつ戻りつ、延べで300〜400メートルほどを、30分ほどかけて歩く。

散歩というにはのんびりしすぎだ。
それでも長時間歩き回って疲れた様子。
こんどは大人しく寝床に入って丸くなる「まゆげ」だった。