アリクイ工房

迷い犬を保護した話「小犬のまゆげ」を綴っています

徘徊の可能性… 〜12月29日(5)

犬の様子がだいたいわかったところで、ご近所のYさんに電話して、餌を分けてもらうことにする。
散歩から帰ってきたYさんが、缶詰と固形のドッグフードを持って来てくれた。

Yさんのお宅では中型犬を飼っている。
昼間は庭に繋いでいて、夜は玄関で寝かせているとのこと。
うちでも預かっている間、同じように夜だけ玄関に入れるつもりだ。
吠えたらどうする、夜のトイレは? など、いろいろと教わる。

「この子は、うちの子より小さいね。
 小型犬なら、Iさんのほうが詳しいんじゃない?」

そうだった。
Iさんはチワワを4匹飼っていて、繁殖の経験もある。
Iさんに電話して相談すると、トイレシートとリードを持ってきてくれた。

「ずいぶんおじいちゃんだね……」
そこをかなり気にしている。

犬も高齢だと痴呆の症状がでて、徘徊することがあるという。
仮に徘徊だとしたら、どれほどの距離を歩いてきたのか、見当がつかない。
飼い主探しの困難さを、改めて思い知る。

Iさんのアドバイスで、一回り大きい段ボールで寝床をこしらえ、さらに大きな段ボールで囲いをつくる。
暴れる様子はないので、囲いを壊したり脱走することはないだろう。

「毛布とかかけないと寒がるかな?」
「外で過ごしていたんなら、段ボールでも充分暖かいと思うよ」
小型犬に慣れているIさんのアドバイスが心強い。

見知らぬ場所で、見知らぬ人に囲まれて、寝床は簡素な段ボール箱。
昨日まで犬が過ごした環境と比べて、いいのか悪いのかわからない。
ぼくとしては精一杯、過ごしやすくしてあげたつもりだけれど。

Iさんが帰り、ぼくら家族が見つめるなかで、小犬は再び眠り始めた。
よほど疲れていたのか、小さくいびきをかいている。
玄関の灯りをそっと消し、皆でリビングに移動した。