アリクイ工房

迷い犬を保護した話「小犬のまゆげ」を綴っています

まずは観察 〜12月29日(4)

よほど疲れていたのか、小犬はすぐ眠りについた。
寒くないように、箱ごとそっと玄関の中に入れてやる。

日も暮れかかってきた。
今日のところは、こうすけくんは家に帰ってもらう。
息子には、たいちくんとまさとくんに電話させ、とりあえずうちで預かることと、明日にもみんなで話し合いをすることと伝えさせる。

電話のあと、二人から聞いた話だけどと、息子が話し始めた。

子どもたちが二手に分かれ、息子とこうすけくんがうちにやってきてドタバタしてたころ、まさとくんとたいちくんは、もう一度交番に行ったそうだ。
「そしたらお巡りさんが、『1月5日まで預かってもいい』って言ってたんだって」
と、ホッとした表情で報告する。

「そういえば、あの交番で犬を飼ってたよね」
と娘が言えば、
「学校の地域調べの授業で交番にいったときも、犬がいたよ。たしか2匹」
と息子が応える。

そうか、だったら一時預かりもしてくれるだろう。
ぼくも気がラクになった。

何はともあれ、明日の朝イチに交番に連れて行き、預かってもらおう。
午後は予定していた通り、息子と映画を観に行けるな……

そうと決まれば、とりあえず今日明日の準備だ。

まずは観察。
寝ている犬を起こさないように、なるべく静かに扱わなければ。
ぼくも犬が好きだし、以前は実家でも飼ってた。
その知識と経験を思い出せ……

犬種はヨークシャテリアで間違いない。
それにしては大人しい。無駄吠えもしないし、落ち着いている。
毛の色は、顔と足下は茶色で、背中が黒っぽい。
毛足がだいぶ長く、あまりブラッシングはされていない。
動作は、チョコマカというよりヨチヨチという感じ。
歯が茶色く染まり、隙間も目立つ。歯茎が下がっているようだ。
つまり、かなりの老犬、雄だからおじいさんなのだろう。

臭いも気になる。長い間放浪したのだろうか。
額のあたりの長い毛が、輪ゴムで無造作に束ねてあった。
若い人ならカラーゴムかリボンを使うだろう。
ということは飼い主はご年配か……