アリクイ工房

迷い犬を保護した話「小犬のまゆげ」を綴っています

エサを食べた! 〜12月29日(8)

風呂の用意をしていたから、たぶん夜9時ころ。
ガサガサッと音がして、犬が クーン クーン と鳴き始めた。
皆で玄関に行くと、段ボールの囲いのなかで足踏みしながら、ねだり声を上げていた。
この切羽詰まった感じの落ち着きのなさ……おしっこか。

抱っこしてリードを付けて、外に出る。
一緒に出てきた息子にリードを持たせ、庭を歩く。
小犬はフルフル震えている。
真冬の夜ふけ。寒さが相当応えるのだろう。
それでもヨチヨチと歩きながら、草の臭いを嗅ぎ、後ろ足をあげておしっこをした。

うちの庭と隣の空き地をぐるっと一周、ほんの数分の散歩から帰る。
器に水を入れて差し出すと、小犬はペチャペチャと舐めた。
牛乳を入れてやったら、これも舐める。
それならと、Yさんに分けて貰った缶詰の半練りビーフを2さじ、紙皿に乗せて、鼻先に差し出してやる。
犬は少し匂いを嗅いだ後、ペロペロと舐めるように食べ始め、あっという間に完食した。
もう2さじ、与える。
犬は皿をきれいに舐めあげ、満足したようすでまた、段ボール箱に自分から納まった。

さっきまで水もエサも欲しがらず、こんこんと眠る姿を見て、もしや病気持ちか、と気になっていた。
年末で動物病院も休みのこの時期、ぐったりしたままだったら、どうすればいいのかと心配だった。

しかし今は、人心地がついて空腹に気づいたのか、食欲が出てきたようだ。
よく眠り、自ら訴えて排便もする。
これなら、ゆっくり寝て疲れがとれれば、元気になるだろう。
そう思うと、気が楽になった。


我が家では動物を飼ったことがほとんどないが、息子は犬好きで、ご近所中の犬をなで回すのを趣味にしている。
将来はトリマーになりたいと、幼いころから公言している。
細君は、猫や鳥はダメだけど、犬なら飼ってもいいという立場。
娘はその点ノンポリだが、動物じたいは嫌いじゃない。

ぼくは断然、犬派だ。
以前は実家でも飼っていた。
だからこそ、犬を飼う大変さが身に染みている。
庭で飼っていた実家の犬には吠えグセがあった。
大人しくさせるために、叱ったりなだめたり散歩させたりで苦労したものだ。

可愛い可愛いだけでトリマーに憧れる息子に、この際、動物を飼う体験をさせるのもいいかも……などと、つい思ってしまう。
いやいや、気が早すぎる。
飼い主の元に返すことを、まず一番に考えなければ。