アリクイ工房

迷い犬を保護した話「小犬のまゆげ」を綴っています

真夜中のお散歩  12月30日(6)

まもなく深夜0時。
息子は寝て、娘は部屋で勉強中。奥さんは風呂上がりに洗濯中。
ぼくは軽く晩酌しながら、年賀状の宛名書きをしている。
突然、玄関からガサゴソッと音がして、「まゆげ」がワンッと鳴いた。

顔を見せてなだめるが、鳴きやむ様子はない。
 ワンッ ワンッ ワンッ
とリズミカルに、何かを訴えるように吠える。

これはやっぱり散歩だろうな。
でもこの調子で、鳴けば散歩に連れてってもらえると思われても困る。
さてどうしたものか……。

迷っていたら、息子が2階から降りてきた。
子どもが寝られないならしょうがない。
上着を着込み、こんどはぼく1人で「まゆげ」を散歩に連れ出す。

真冬の真夜中。空は澄み渡り、オリオン座がきれいに瞬いている。
しんしんと身に染みるような冷え込みの下、昨日出会ったばかりの犬を連れて散歩をする。
まるでそれが数年来の日課のように。

「まゆ毛」は実によく慣れた犬だ。
他人の家でも行儀よく、散歩するときも従順だ。

……この犬なら、飼いやすいよな……

そんな思いが、つい、頭によぎる。

いやだめだ、これは預かっている犬だ。
必要以上に愛着を感じちゃいけない。

だけど、好感を抱いちゃったんだもん。
可愛いんだもん。
うちで引き取ればいいじゃないの?

何事も達観しているような顔つきの「まゆげ」だが、君の願いはどっちなんだ?
ここにいること? 飼い主の元に戻ること?

……考えても詮無きことに思い巡らせる。

「まゆげ」は草むらで、プリッとうんこをした。
ああなんだ、うんこをしたかったのね……。
それで満足したようで、家に戻ると素直に寝床に納まった。