アリクイ工房

迷い犬を保護した話「小犬のまゆげ」を綴っています

息子たちはチラシ貼りへ、娘はお散歩へ  12月31日(3)

シャンプーをして「まゆげ」はさっぱりふわふわになった。
買物しようとスーパーに立ち寄り、「まゆげ」は外のポールに繋いでおいた。
買物を終えると、彼は静かにお座りして待っていた。

よくしつけられていると感心するが、といってぼくらが近づいても喜びはしない。
人に慣れているというだけで、懐いたわけではないってことか。

帰宅すると、細君と娘がいそいそとやってきて、笑顔で「まゆげ」をなで回す。
「まゆげ」は抵抗もせず、されるがままに弄ばれていた。

午後になり、たいちくんとこうすけくんがうちにやってくる。
まさとくんからはさっき電話があり、用事で来られないとのこと。

用意しておいたチラシを息子ら3人に預け、昨日まさとくんと息子とで話し合って決めた方針を皆に伝える。

彼らは交番、スーパーマーケット、公民館などを巡り、掲示板にチラシを貼らせてもらうよう交渉する。
犬を散歩させている飼い主にも声を掛けて、チラシを手渡すという。
小学生ができる精一杯。
「夕方、暗くならないうちに戻っておいで」と声かけて、3人を送り出す。

たいちくんが「まゆげ」を連れて行こうとするが、チラシに写真を載せてあるからと押しとどめる。
気持ちはわかるが、年寄り犬を連れ回しちゃいけないよ。

ずっこけトリオが出かけ、「まゆげ」の周りは静かになった。
この時を待っていたのかのように、娘が「まゆ毛」を構い始める。

彼は朝から何も食べてない。
娘は水でふやかした固形フードを食べさせようと、掌に乗せて差し出したり、ぐずぐずに潰してみたりする。
「まゆげ」は匂いは嗅ぐものの、頑なに食べようとしない。
彼にとっては、食欲をそそる匂いではないようだ。
やはりミート缶ばかり食べてきたのだろうか。

うらうらと穏やかな陽気の大晦日の午後1時過ぎ。
娘は受験勉強もそっちのけで、「まゆげ」を連れて家の周りを歩いている。

ご近所じゅうの犬が友だちの息子とは違い、娘は犬の扱いに慣れていない。
「まゆげ」との距離感も、なんだか危なっかしい。
どこか怖々として腰が引けている。
そんな娘を穏やかに受け止め、散歩に付き合ってくれる「まゆげ」が愛おしい。