固形フードは食べられない? 12月30日(4)
夕方になる前にまさとくんが帰り、入れ替わりで細君がパートから帰ってきた。
さっきつくったチラシを細君に見せて、うちの電話番号を記すことの了解を得る。
内容が決まれば、あとはプリンタで増やすだけ。
今日のうちに用意して、明日にも子どもらにチラシ撒きをしてもらおう。
親同士も話したほうがいいだろうと、細君がこうすけくんのお母さんに電話する。
さらにたいちくん、まさとくんとも連絡を取り、明日の午後にずっこけ4人組が集まることにする。
明日は大晦日。
正月休みに入る前に、少しでもやれることをやっておこう。
個人宅は無理としても、店や交番にはチラシの張り出しを頼めるだろう。
息子と一緒に、近所の100円ショップに歩いて行く。
すぐにお返しするかもしれない犬のために、あまり用具を揃えたくない。
でも、飲み水や食事用の安定した器は、やっぱりあったほうがいい。
「男の子だから」と、息子が緑色の器を選ぶ。
おもちゃ代わりにでもなればと、小型犬用のガムも買う。
とっぷりと日も暮れた午後6時。
朝の食事から半日が経ち、犬もお腹が空いただろう。
「ウェットタイプのビーフ缶だけあげると、固形フードを嫌がって食べなくなるよ」
と、近所のYさんに言われていた。
2、3日ならともかく、長期戦も覚悟した以上、エサの選り好みはしてほしくない。
今宵の食事は、缶詰のウェットビーフと固形フードを混ぜたもの。
うまく食べてくれればいいが……
ちょこんとお座りする犬の鼻に、器を差し出す。
フンフンと匂いを嗅いだ後、勢いよく、ペロペロと舐め始めた。
うまくいった……はずが、減っていくのは舐め取れるビーフのみ。
固形フードは器に残ったままだった。
この犬は、固形フードを食べ物だと認識してないのか?
食べたことがないのか、それとも歯が悪くて敬遠してるのか?
どちらにしても、この先ずっとビーフ缶というのもちょっと厳しい。
食事の量はまだ足りないはずだ。
いずれ食べるかも知れないと、水でふやかした固形フードをそのまま置いておく。
空腹にさせて食べるのを待つ、なんて、もしかして動物虐待になるか……
ぼくの実家で犬を飼っていたのはもう30年近く前。
時代遅れの経験を活かそうしていいのか? と、いちいち自信がないのだった。