アリクイ工房

迷い犬を保護した話「小犬のまゆげ」を綴っています

赤ん坊のような 〜12月29日(7)

夕食を食べながら、家族で話しあう。

「交番で預かってくれるのは1週間でしょ。そのあとどうするの」
「わからないな。保護してきた ずっこけ4人組に相談してもらうよ」
「うちで飼うの?」
「それもわからない。でも飼うのは大変だ。1日2回、毎日散歩させなきゃいけないし」
「家の中で飼うのは?」
「それはダメだな。掃除が大変」
「名前はどうする?」
「みんなで決めた。ココアっていうんだ」
「名前をつけちゃだめだよ。本当の名前と違うと、犬が迷っちゃう。それに、別れるとき寂しくなるよ」
「そうか……」

いくら話しても、何も決まらない。
今ここに犬がいるという事実があるだけ。

時折、玄関からガサッと音が聞こえ、みな一斉に玄関のほうを向く。
息子がそーっと様子を見にいくが、犬は静かに眠っていた。
身じろぎをしたときに、箱に擦れた音だろう。

やれやれ、とまた食卓につく。
こんどは妙に静かだ。寝息も聞こえない。
まさか……と気になり、様子を見にいくと、やっぱり静かに眠っていた。

音がしたらしたで、しなければしないで、気になってしょうがない。
この感じ、前にもあったな……。

そう、思い出した。
赤ん坊がいるときってこんな具合だった。
さっきまで無垢な寝顔を見せていたのに、ふと見やると、手脚を突っ張ってモロー反射してたり、黙って口をパクパクしてたり。

小さな体から発せられる生命のエネルギーが、家族の心を温かくした。
そんな、息子の赤ん坊時代からかれこれ10年ぶりに、至福の時を過ごしている。