飼い主は? 〜12月29日(2)
息子たちの説明によると…
息子とこうすけくん、まさとくん、たいちくんの4人で、公園の芝生広場でサッカーボールを蹴っていた。
そのとき植え込みの影から、ひょいと顔を出したのが、この小型犬だった。
「あっ、犬だ! かわいいー」
犬好きのうちの息子が駈け寄ると、犬は逃げた。
ヨチヨチと、チョコマカと、走る犬。
小5男子が4人がかりで追いかけて、やっと捕まえた。
犬は抵抗もせず、大人しく抱っこされた。
首輪はしていない。
周りを見渡したが、飼い主らしい人はいなかった。
「脱走してきたのかな」
「捨てられたのかも」
4人は心配になって、犬を抱っこしたまま周辺を歩き回った。
家々を尋ねて「この犬を知りませんか」と聞いてみたが、知っている人はいなかった。
公園の近くにある交番にも行った。
飼い主からの届けは無かった。
預かってと頼んでみたが、交番では預かれないと断られた。
さあ困った。
子どもらは2人ずつに別れて、まさとくんとたいちくんはそのまま聞き込みを続けることにした。
息子とこうすけくんは、とりあえず親に相談しようと、犬を連れ帰ってきた……
子どもらの説明を聞いているところに、細君がパートから帰ってきた。
状況が飲み込めずにキョトンとする細君に、いま聞いたばかりの話を伝える。
「それで、君らはこの犬をどうしたいの?」
子どもらに尋ねる。
こうすけくんが答える。
「首輪をしてないし、年寄り犬みたいだから、きっと捨て犬です。
可愛そうだから飼ってあげたいけど、うちは借りている家で、汚したりしたらいけないから、動物は飼えないんです。
だから、だから……」
我が家で飼ってくれと……?
そのつもりで連れてきたのか、と息子に目をやると、大人しくお座りしてる犬を満面の笑顔でなで回していた。
他人事じゃないぞっ!と息子の頭にゲンコツを一発くれてやる。
「いてて…… あのね、おれたちで飼い主を探すから、みつかるまで、うちで飼ってもいい?」
「いや、この場合、『飼う』じゃなくて『預かる』だな」
「そういう問題じゃないでしょ!」
黙って聞いてた細君に、いきなり叱られた。